平成20年12月19日
五 小 の 風 景 No.9
五日市小学校長
国政 直文
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自己肯定感の持てる子に
笑おうと いつもがんばる あなたには 涙見せる 強さあげたい
この短歌,若山牧水賞(全国子ども短歌コンクール)中学生部門の最優秀賞に選ばれた作品です。「男は強くなければならない」
といわれたあの富国強兵の時代に, 「自分は悲しい」 「自分は寂しい」 という歌をたくさんつくった若山牧水の精神に近い歌だと
思います。
若山牧水の強さは,悲しいとか寂しいとか言ったり,涙を見せたりすることが否定的に見られていた時代に,涙を見せるのは強い
ことなんだと言ってるところにあると先日読んだ雑誌に書いてありました。
涙を見せるのは強さなんだ。泣きたいときは泣き,助けがほしいときは助けてと言い,悔しい時は悔しいと言っていいんだと。
自己肯定感(自分のあらゆる面をまるごと受け入れ,どんなことがあっても自分はだいじょうぶだという思い)がないと,こういうこ
とはなかなか言うことができないと言われています。
では,この自己肯定感を子ども達に持たせるには,どうすればいいのかということになります。それは,子ども達に「自分は愛され
ているんだ」ということを実感させることだと言われています。子ども達にそう実感させるには,私は,まずは子ども達の言葉にしっかりと耳を傾けることが大切だと思います。耳を傾け向ける時間の長短に関係はありません。短い時間でも,本気で聞いているという
ことが相手に伝わればいいんです。次の歌は,若山牧水賞(全国子ども短歌コンクール)小学生部門で最優秀賞に選ばれたもの
です。
負けたんだ 徒走の時に ライバルに 自分が一番 ライバルだけど
悔しい時は,悔しいと表現できているこの歌。この歌を作った子どもには,自己肯定感が育っているのだろうなと感じます。
こうやって偉そうに書いている私自身,自己肯定感があるかといえば疑問です。自分自身を常に振り返りながら,理想を持って生
きていきたいものです。
大人の姿勢,行動を子ども達は黙っていますが,よく見ています。最後に同じ雑誌の中で紹介されていた高校生の短歌を2つほど。

俺に似た わたしに似たと 父と母 長所の取り合い 短所の譲り合い
感性と 知性は両方 必要と 両方もたぬ 大人達が言う
多くの自治体で,毎月第三日曜日を「家庭の日」と定め,「家族みんなで話し合いや団欒の時間を持つ」「家族みんなで食事をする」「家族みんなで地域での行事に参加する」などのスローガンを掲げて行事や活動が行われているようです。
最低限,月1回でも「家庭の日」を決めて,親子のふれあいや語り合う時間をとってみられてはどうでしょうか。そして,しっかりと子ども達の声に本気で耳を傾けてほしいと思っています。
本年も保護者の皆様,地域の皆様には,大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。皆様、よいお年を。